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音楽葬における前夜祭コンサート形式
無宗教葬や自由葬の一形態として人気を集めている「音楽葬」において、前夜祭は故人を偲ぶための「追悼コンサート」や「メモリアルライブ」として開催されることが多く、従来の通夜の概念を覆す感動的な演出が見られます。音楽好きだった故人のために、生演奏のプロのミュージシャンを招いたり、故人の友人たちがバンドを組んで演奏したり、あるいは故人が愛聴していたレコードやCDを流しながら、参列者がグラスを片手に思い出を語り合うといったスタイルは、まるでジャズクラブやライブハウスのような雰囲気を醸し出します。この形式の前夜祭では、読経や焼香といった宗教儀礼は行われないことが多く、代わりに「献奏(けんそう)」として、一曲ごとに黙祷を捧げたり、参列者全員で故人の好きだった歌を合唱したりする時間が設けられます。マナーとしては、拍手をするかどうか迷うところですが、演奏が終わった後に静かに拍手を送ることは、演奏者への敬意だけでなく故人への称賛(ブラボー)の意味も込められているため、場の空気に合わせて自然に行えば問題ありません。服装も、喪服である必要はなく、平服(スマートカジュアル)での参加が推奨されることもあり、ドレスコードとして「故人の好きだった色を身につける」といった指定がある場合もあります。音楽葬の前夜祭は、涙よりも笑顔や音楽の力で故人を送り出そうという遺族の意志が強く反映されており、参列者にとっても、重苦しい儀式ではなく、音楽を通じて故人の人生や人柄を再確認し、心穏やかに別れを受け入れることができる癒やしの時間となります。ただし、あまりに騒がしくなりすぎると近隣の迷惑になったり、不謹慎だと感じる参列者もいたりするため、主催者は音量の配慮や、静かに偲びたい人のためのスペース確保など、バランス感覚を持った運営が求められます。
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葬儀中に時計を見る行為は失礼にあたるか
どんなにマナーに適合した時計をつけていても、葬儀の最中に頻繁に時計を見るという「行為」そのものが、最大のマナー違反であり、遺族や周囲に対して極めて失礼な態度となることを忘れてはいけません。読経中や焼香の列に並んでいる時に、何度も腕を上げて時間を確認したり、あからさまに時計を覗き込んだりする姿は、「早く終わらないかな」「退屈だな」「次の予定が気になる」という心の声を行動で示しているようなものであり、故人への哀悼の意が感じられません。特に、喪主や遺族は、参列者の様子をよく見ていますので、時計ばかり気にしている人がいれば、「忙しいのに無理に来てもらったのか」「心ここにあらずだな」と悲しい気持ちにさせてしまうでしょう。どうしても時間が気になる場合(例えば、電車の時間や仕事のアポイントがある場合など)は、時計を体の内側に隠すようにしてこっそりと見るか、トイレに立った際などに確認するのがスマートな対応です。また、時計のアラーム機能や時報(ピッという音)が式中に鳴り響くのも厳禁ですので、事前に必ず設定を解除しておくか、リューズを引いて時計を止めておくくらいの慎重さがあっても良いかもしれません。葬儀の時間は、現世の時間を忘れて故人と向き合うための特別な時間ですので、自分のスケジュールの都合を優先させるのではなく、その場に身を委ね、静かに時が流れるのを待つ心の余裕を持つことが、参列者としての品格を高めることにつながります。時計はあくまで「身だしなみ」の一部として身につけるものであり、式中は「見ないもの」として扱うのが、究極の時計マナーと言えるのです。