葬儀のお手伝いをしてくださった方へのお礼として、現金を渡すことは日本の慣習として広く行われています。これは「心付け」とも呼ばれ、感謝の気持ちを具体的な形として示すものです。しかし、現金のやり取りは非常にデリケートな問題でもあり、渡し方には細やかな作法と配慮が求められます。まず重要なのは、お金を裸のまま手渡すことは絶対に避けるということです。必ず、白い無地の封筒か、ポチ袋に入れます。不祝儀袋のように水引がついたものは、お礼には不適切なので使用しません。表書きは、毛筆や筆ペンを使い、楷書で丁寧に「御礼」と書くのが最も一般的です。地域や状況によっては「志」や「心付け」と書くこともあります。その下に、喪主の姓名をフルネームで記します。金額については、相手との関係性やお手伝いの内容、地域の慣習によって大きく変動しますが、一般的な目安としては一人あたり三千円、五千円、一万円といったきりの良い数字で用意することが多いようです。特に会計係など金銭を扱う重要な役割を担ってくれた方や、長時間にわたり中心となって動いてくれた方には、他の方より少し多めに包むのが通例です。お札を入れる際には、新札を用意する必要はありません。新札は不幸を予期していたかのような印象を与えかねないため、かえって失礼にあたるとされています。もし手元に新札しかない場合は、一度折り目をつけてから入れると良いでしょう。お札の向きは、封筒の表側から見て、人物の顔が上に来るように入れます。そして、最も大切なのが渡し方です。葬儀や会食が終わり、相手が帰る間際に、他の人の目につかない場所で、静かに手渡すのがスマートです。その際には、必ず「本日は大変お世話になり、ありがとうございました。おかげさまで滞りなく終えることができました。心ばかりの印ですが、お納めください」といった感謝の言葉を直接伝えることを忘れてはいけません。現金という形ではありますが、そこに心を込めた言葉を添えることで、初めて本当の感謝が伝わるのです。
葬儀のお手伝いに現金でお礼する作法