社会構造や人々の価値観の変化に伴い、葬儀の形もまた、この数十年で大きく様変わりしました。かつては地域社会全体で故人を見送る大規模な一般葬が主流でしたが、現在ではより多様で個人的な形が選ばれるようになっています。こうした変化の中で、現代の葬儀事情を映し出す新しい用語も次々と生まれています。その代表格が「家族葬」です。これは、故人の家族やごく親しい友人など、少人数で執り行われる葬儀の総称です。義理の弔問などをなくし、身内だけで心ゆくまで故人とのお別れの時間を過ごしたいというニーズから広まりました。さらに儀式を簡略化した形式として「一日葬」や「直葬」も登場しました。「一日葬」は、通夜を行わず、告別式から火葬までを一日で済ませる形式です。遠方からの親族や高齢の遺族の身体的な負担を軽減できるという利点があります。「直葬」は、通夜も告別式も行わず、火葬のみを行う最もシンプルな形式で、「火葬式」とも呼ばれます。費用を抑えたい、あるいは故人の遺志を尊重したいという場合に選ばれます。また、生前の準備に関連する言葉も一般的になりました。「終活」は、人生の終わりに向けての活動全般を指す言葉で、単なる葬儀の準備にとどまらず、遺言の作成、財産整理、医療や介護に関する意思表示など、幅広い意味で使われます。その一環として作成されるのが「エンディングノート」です。これは、自分の情報や希望を書き留めておくノートで、法的な効力はありませんが、万が一の時に家族が困らないようにという思いやりから生まれました。さらに、お墓のあり方に関する「墓じまい」や「樹木葬」「海洋散骨」といった言葉も、継承者問題や自然志向の高まりを背景に、広く知られるようになりました。これらの新しい用語は、現代人が死とどう向き合い、どのように大切な人を見送りたいと考えているのかを映し出す鏡と言えるでしょう。