大切な人の万が一に備える、あるいは自身の終活の一環として葬儀費用を準備する際、多くの人が「葬儀積立(互助会)」と「葬儀保険(少額短期保険)」という二つの選択肢で悩むことになります。どちらも将来の負担を軽減するという目的は同じですが、その性質は大きく異なります。自分にとってどちらが最適かを選ぶためには、それぞれの仕組みの違いを正しく理解することが不可欠です。まず、互助会の積立は「サービス」で受け取ることを前提とした仕組みです。毎月の掛金を支払うことで、将来、契約した内容の葬儀サービスを会員価格で利用する権利を得ます。メリットは、インフレに強く、将来物価が上がっても契約時のサービス内容が保証される点です。また、葬儀社を探す手間が省け、一貫したサポートを受けられる安心感があります。一方の葬儀保険は、「現金」で受け取る仕組みです。保険料を支払い、被保険者が亡くなった際に、受取人がまとまった保険金(現金)を受け取ります。最大のメリットは、受け取った現金の使い道が自由であることです。葬儀費用に充てるのはもちろん、お墓の購入費用や法要の費用、あるいは当面の生活費など、状況に応じて柔軟に使うことができます。また、葬儀社を自由に選べるのも大きな利点です。では、どちらを選ぶべきか。もし、特定の葬儀社やプランに魅力を感じており、葬儀そのものの手配をスムーズに進めたいと考えるなら、互助会の積立が向いているでしょう。一方で、どの葬儀社に依頼するかは状況を見て決めたい、あるいは葬儀費用だけでなく、その後の諸費用にも備えたいと考えるなら、現金の自由度が高い葬儀保険が適しています。また、健康状態に不安があり、保険の加入が難しい場合には、加入審査がほとんどない互助会が有力な選択肢となります。それぞれのメリットとデメリットを天秤にかけ、自分が何を最も重視するのかを明確にすることが、後悔しない選択への第一歩です。