私はこれまでに、身内や親しい友人の葬儀で、何度かお手伝いをさせていただいた経験があります。受付係をしたり、駐車場で車の誘導をしたり。慣れない作業に戸惑いながらも、少しでも力になれればという一心で動きました。そして、その度に喪主やご遺族からお礼の言葉をいただき、時には心付けや品物をいただくこともありました。その経験を通して、私が強く感じていることがあります。それは、葬儀のお手伝いへのお礼で一番大切なのは、金額の多さや品物の豪華さではない、ということです。もちろん、形としてのお礼は、日本の美しい習慣であり、感謝を示す上で重要な要素です。しかし、それ以上に私たちの心に残るのは、喪主やご遺族からかけられた、心からの「ありがとう」という言葉と、その時の表情なのです。ある葬儀でのことでした。すべての儀式が終わり、疲れ切った表情の喪主が私のところへやって来て、小さなポチ袋を差し出しながら、私の目をじっと見てこう言いました。「〇〇さんがいてくれて、本当に助かった。ありがとう」。その一言と、感謝と安堵が入り混じったようなその表情を見た時、私は現金や品物といった物質的な価値をはるかに超えた、温かいものをいただいたような気持ちになりました。お手伝いをする側は、決して見返りを求めて動いているわけではありません。大切な人を亡くした友人の力になりたい、大変な状況にあるご遺族を少しでも支えたい、という純粋な気持ちから参加しています。だからこそ、その気持ちに対して「本当に助かった」「あなたのおかげです」と応えてもらえることが、何よりの報酬となるのです。これから葬儀を執り行い、誰かにお手伝いをお願いする立場になる方もいるでしょう。その時には、お礼の相場やマナーを調べることも大切ですが、どうか忘れないでください。あなたが今感じている感謝の気持ちを、自分の言葉で、まっすぐに相手に伝えること。その誠実な心のやり取りこそが、どんな高価な品物にも勝る、最高のお礼になるということを。形式だけでなく、心と心の繋がりを大切にすること。それこそが、葬儀という儀式が私たちに教えてくれる、最も尊いことなのかもしれません。
葬儀の手伝いへのお礼で一番大切なこと