親しい身内だけで行う家族葬において、前夜祭(通夜)は形式にとらわれず、家族水入らずで故人と過ごす「最後の団欒」の時間として、自由で温かいスタイルで行われることが増えています。一般的な葬儀のような参列者への対応(受付や接待)がないため、遺族は精神的にも時間的にも余裕を持つことができ、故人の好物だった食事をみんなで囲んだり、昔のアルバムを見ながら思い出話に花を咲かせたり、あるいは故人が好きだった映画や音楽を流して一緒に楽しんだりと、思い思いの過ごし方が可能です。また、線香の番(寝ずの番)についても、厳格に行う必要はなく、葬儀社のスタッフに任せるか、長時間燃焼する線香や電気ロウソクを活用して、遺族はしっかりと睡眠を取るなど、翌日の告別式に備えて体を休めることを優先するケースが一般的です。家族葬の前夜祭では、宗教的な儀式(読経など)を省略して、完全に無宗教の「お別れ会」として行うこともあれば、僧侶を呼んでしっかりと読経をしてもらうこともありますが、いずれにしても「家族が納得できる形」で時間を過ごすことが何よりの供養となります。服装に関しても、喪服に着替えずに平服やリラックスできる服装で過ごすことも許容され、故人の布団の周りに家族みんなで雑魚寝をするなど、自宅にいるような感覚で最期の夜を共有することも、家族葬ならではの特権と言えるでしょう。この時間は、故人との物理的な別れを惜しむだけでなく、残された家族同士の絆を深め、これからの生活に向けて心を一つにするための大切なグリーフケア(悲嘆の癒やし)のプロセスでもあり、誰にも気兼ねすることなく涙し、笑い合える空間こそが、故人への最高のプレゼントとなるのです。